序章 風が草原を吹き抜けて行く。 その光景を一人の青年が眺めている。 「風・・・」 ふと青年がつぶやく。 「どうしたの?」 少し離れたところから女性の声が聞こえる。 「風なら知っているだろうなと思ってね」 西南がどこか遠くを見るような目をして言う。 「そうね・・・知ってるでしょうね。幻の都市エルディア・・・」 女性が青年の隣に立つ。 「行こう」 「早く見つかるといいわね」 二人は草原を歩き出す。幻の都市を目指して・・・ 幻の都市エルディア――かつてこの世界には高度に発展した文明があった。 その文明の中心地がエルディアである。しかしこの文明の記録は驚くほど少なかった。アレイディア王国の王立図書館にある古文書が唯一の記録であった。学者たちの中では本当は存在しなかったのではとゆう意見が多数を占めるほど、資料が少ないのである。 しかしそれでもこの都市の存在を信じ探し求める者は多かった。彼らはシーカー探求者と呼ばれていた。